自転車趣味のブログ

ロードバイクについて個人的な体験を書いています。

Prime BlackEdition 38ホイールのカートリッジベアリングの選び方について

  • ホイールのカートリッジベアリングの選び方について、自分なりに調べてみたことを書いています。

Prime BlackEdition 38 ハブベアリングの仕様

ハブ: R010、CNC 加工済み 7075 アロイハブボディ
ハブベアリング: フロント: 2x 699、リア: 1x 15267 & 1x 6802、フリーハブ: 2x 15267
リアハブベアリング: コード: 15267-2RS & 6802-2RS

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ベアリング 寸法 数量 代替品の例
699-2RS 内径9 x 外径20 x 幅6mm 2 ・中華ベアリング(Amazon, AliExpress)
・NSK SS699DD (両側接触シール形)
[セラミック]
・Ceramic Speed 619/9 (699) Standard

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ベアリング 寸法 数量 代替品の例
15267-2RS 内径15 x 外径26 x 幅7mm 1 (Hub)
2(FreeBody)
・中華ベアリング(Amazon, AliExpress)
・日本メーカ:見当たらず
[セラミック]
・ENDURO ABEC5 MR1526LLB A5
・ Ceramic Speed 15267 (Standard / Coated)
6802-2RS 内径15 x 外径24 x 幅5mm 1 (Hub) ・中華ベアリング(Amazon, AliExpress)
NTN 6802LLB (両側非接触ゴムシール形)
[セラミック]
・ENDURO ABEC5 61802LLB
・Ceramic Speed 61802 (6802) (Standard / Coated)

ベアリングの購入について

  • Prime RP-38 リアホイールに使用されているベアリングサイズ 15267-2RS(15x26x7mm)は、国内メーカでは見あたりませんでした。AliExpressやAmazonではいくつか見つかりました。
    今回は、Amazonから中国製のセラミックベアリングのものを購入しました。後になって、ベアリングベアリングの名前に含まれる仕様について調べ直してみました。

  • 購入時にはベアリング球の材質やシール方法が気になった。

  • 実際のロードバイクの運用時にはグリース詰め量が回転抵抗の多くを占めるように思います。これは頻繁にメンテナンスできるかどうかにもよります。ただ、メンテナンスを行っていたとしても、所詮は数千km程度の寿命です。
  • 寿命を迎えたベアリングは交換するしか方法がありません。ただし交換さえしてしまえば、ほぼ新品の性能にもどる筈なので、合理的といえるかもしれません。

ベアリングの精度等級の規格について

  • ベアリングの精度は、ABEC / ISO 492 / JIS で規格化されています。(ABEC 1 p0等)
  • Enduro社のベアリングではABEC 3・5のものがあります。
  • 実際には、ABEC規格の数値が高いベアリングが必ずしも自転車用に高性能で長持ちするベアリングを意味するわけではありません。(Enduro Bearings Webサイトより)
  • ABECの意味するところは寸法公差(基準値との誤差の許容度)。
     (基準値に近い(可能性が高い)→ 精度が良い個体である確率が、より高い)
  • 例えば、航空宇宙・医療・原子力等の高度な信頼性が求められるような分野を指しています。

    ABEC ISO 492 DIN 620 JIS B1514 振れ精度 備考
    ABEC 1 normal
    class 6X
    P0 0級 0.0100mm 普通レベル
    ABEC 3 class 6 P6 6級 0.0060mm ※Enduro Bearings
    ABEC 5 class 5 P5 5級 0.0040mm ※Enduro Bearings
    ABEC 7 class 4 P4 4級 0.0025mm
    ABEC 9 class 2 P2 2級 0.0015mm より精密

    https://en.wikipedia.org/wiki/ABEC_scale

    • ABEC : American Bearing Manufactures Association(米国)
    • DIN: Deutsches Institut für Normung (独国 the German Institute for Standardisation)

回転性能へのこだわり

  • セラミック球は硬度が高いため、レース側にも対策がされていなければ、性能を発揮できません。

Enduro ベアリングの場合

  • Enduro Bearingsでは、マグネタイト処理を行うことでレース側の耐久性を上げています。

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CelamicSpeed ベアリングの場合

  • セラミックスピード・ベアリングの寿命を向上させる独自のコーティングが施されています。レースの硬度が上がり、セラミックスピードボールの滑らかさと相まって、ベアリングの摩耗がほとんど無くなりました。

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    The Coated Advantage | Ultimate Gains in Performance and Longevity

セラミック球を謳う安価なベアリングの場合

  • セラミック球を謳う製品で安価なものは沢山ありますが、硬度の高いセラミック球を受け止めているレース側が負けてしまうため、むしろ性能劣化が早く、ベアリング寿命は短めになるようです。
    (私が入手したのも、こうしたモノの一つです。)

(番外編)カップ&コーン式ハブにセラミック球をインストール

シール性

  • シールには、外的要因からベアリング内部を守り、グリースが流れ去ることを止める働きがあります。
  • 2RSは、両サイドに接触型シール付きという意味です。
  • シールが強ければベアリング寿命には有利な反面、回転抵抗は増加してしまう関係にあります。

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内部すきま(C-N clearance)

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軸受の内部すきま | ベアリングの基礎知識 | ベアリングのKoyo(ジェイテクト)

  • どのベアリングにも、必ず僅かな内部すきまが設けられています。自転車用の場合、CN(標準)がほとんどかと思いますので、意識されていないか、製品表記からも省略されている場合が多いように思います。
  • 一般的に、 CN(標準)として、C1・2(より小さくなる)、C3・4・5(より大きくなる)のように表記されます。
     C1<C2<CM<CN(標準)<C3<C4
  • ベアリングの内側の輪が垂直方向に動く(ズレる)場合をラジアル内部すきまといい、軸方向(横方向)に動かした場合をアキシアル内部すきまといいます。ラジアル側のズレ量が大きいものは、必然的にアキシアル側も大きくなる関係になります。
  • 内部すきま自体は、ベアリング性能の一つです。例えば、適切な内部すきまならばベアリング寿命を延ばすことに繋がります。また、斜め方向に掛かる加重を許容しやすい設計ということでもあるため、加重方向が複雑に変化するホイールベアリングには有用と考えられます。
  • MAVICホイール(Ksyrium S, COSMIC SLR 40)には、内部すきまC3のカートリッジベアリングが採用されています(※QRMオート:プリロード自動調整)。

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    [MAVIC テクニカルマニュアル]
    https://technicalmanual.mavic.com/tech-mavic/technical_manual/data/mavic_tech.php

グリースの充填量

  • ベアリング装着前であれば、シールを外してグリスを詰め替えることが容易です。グリース充填量は、一般には空間容積の1/3~1/2程度で良いとされています。
  • グリース充填量が多すぎると、かくはんにより発熱し、グリースの変質・劣化・軟化をもたらすため注意が必要とされます。しかし、自転車の場合は、回転数が低いため熱については無視して問題ないです。グリースを入れすぎることによって回転抵抗が増加してしまう方がよっぽど問題です。
  • 補給する前に古いグリースをしっかり洗い流すこと、補充時には新しいグリースが確実に軸受内部に入るようにすることが大切です。

NTN製ベアリングの主要寸法と呼び番号

  • 以上について、NTNの製品では下表のとおりです。

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